下界にて2010年11月29日 23:59

普段は自分の頭上に青空があって、燦々と太陽が輝き、
夜には無数の星々、そして月の瞳があるなんてまったく考えない。
目の前のことに齷齪と日々を過ごすのみだ。

先日嫁の田舎の熊本に行った。
熊本とは言え、クルマで4時間近く走らねばならない。
本当に何もない田舎だ。
山が海までせり出していて、僅かな平地に集落がある。
その狭い路地を歩いている時に、家の窓際に何気なく今風の
ぬいぐるみが置かれているのを目にした。
私が今住んでいるところも大した所ではない。
だが駅前に行けば百貨店もスーパーもある。
流行の品々でもなんでもすぐに買えるだろう。
そのぬいぐるみを見た時にふと思った。
もしこの家に子供がいて、流行の品物が欲しいとねだったら、
何時間もかけて熊本市街まで出るのだろうかと。
だがしかし、果たしてすぐにモノが手に入るのが幸せなんだろうか。
何時間もかけて買いに行ったものは、同じモノでも
「ありがたみ」が違うのではないかと。
そういう意味では、何もなくても・・・
いや、ない方がむしろ幸せなのではないかとさえ思った。

とは言え、嫁の実家周辺はあまり子供を見かけない。
いや、私が今住んでいる家の通りにも、子供のいる家は一軒しかない。
本当にこの国は大丈夫なんだろうか。

嫁の実家を発つ時に珍しく
「帰りたくない」
という思いが何故かこみ上げてきた。
理由はよくわからないし、嫁の実家である以外はなんの縁もない。
嫁の親戚以外に知った人もないし、なにより皆何をしゃべってるか
サッパリわからんかったりするのだが。
そんなに齷齪と生活してるわけじゃないけど、
田舎のゆっくり流れる時間の中で、しばらく生活したらどうだろうと。
かなわぬ望みではあるが。



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